NHKスペシャル 第3回老いと戦う 免疫細胞 老化防止
2014年4月6日放送

シリーズ最終回となる第3回は、老化研究や再生医療の最先端研究を紹介し、細胞社会の終わりを見つめる。出演は京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥さん、劇作家・演出家・役者の野田秀樹さん、作家の阿川佐和子さん。テーマ曲はヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん。



世界的に長寿で有名な、イタリアのサルデーニャ島では、100歳の割合が二倍だという。延べ3000人の百歳以上の方の血液を調べると、驚くなかれ、病原菌に対して免疫細胞が20代と同じように効果的に働いていた、という。
 全身に2兆個あるという免疫細胞は、骨髄の「ニッチ」という場所で、1日に1000億個作られ、胸腺で免疫細胞の性能を選別し、有能な免疫細胞のみを全身に送り出すのである。

  
 
 たくさんの種類の免疫細胞が生まれる中で、「司令塔」といえる存在が「T細胞」である。
 

←まず、樹状細胞が、体の中に入ってき
た異物を捕らえてT細胞のもとへと運び。
それがもし有害な病原体であるとT細胞
が判断すると、T細胞からは「サイトカイ
ン」という物質を放出する。山中教授曰く
(その)"一斉メール"によって、他の免疫
細胞に連絡し、警戒命令を下す。

その"一斉メール"を受けると、マクロファージが活
動して、病原体を捕え、どんどん食べていく・・・。免
疫のシステムは、このような連携プレーによって、
われわれ人体を守ってくれている。

   老化を防ぎ、長寿を可能にするのは、遺伝と免疫力である

その免疫力は、年令と共に低下し
ている。一般の人には気付きにく
いが、それをT細胞(免疫細胞の
司令官)の活動で比較してみる
と、普通はこのような差がある。
  今後、人間は、「遺伝」的に"長
生きタイプ、短命タイプ"の優劣
で、結婚相手を選ぶようになるか
もしれない。 


 骨髄で作られたT細胞は、まず心臓の上にある胸腺に送られ、溜め込まれる。このときの免疫細胞の司令塔T細胞の表面には、異物を見分けるための「アンテナ」となる突起物が、既にビッシリと生えている。それは、さまざまな病原体に対応できるようにランダムに生み出され、それぞれが違う形の「アンテナ」を持つように特化されている。

 

 ところが、胸腺において、これらT細胞(免疫細胞の司令塔)の厳しい選別がなされ、大部分は胸腺の壁で破壊され、生き残るT細胞はわずか5%以下になる。こうして厳しく選別された精鋭たち5%が、病原体攻撃の前線へと送られていく。



  そのようにT細胞を選別する胸腺は、なんと思春期を過ぎる頃には働きを止め消滅してしまう。その結果、T細胞は一切補充されなくなり、判断力を失って、挙句に暴走するooo
 というのが「老化」の正体だ、と最近は考えられる。
 その免疫細胞が、「免疫細胞の暴走」を起こすことを大阪大学のバイオイメージング技術が、世界で初めて映像に捉えた。そこには、正常であるはずの肝臓の細胞にビッシリとマクロファージが群がり、攻撃している様子が鮮明に映っていた。


 
   また、血管にマクロファージが貼り付いて血管の流れを滞らせ、動脈硬化の原因をつくることもわかった。また、メタボリック症候群も、免疫細胞の老化(働き不良)が関わっているらしい。
 このような、免疫細胞がなぜ「暴走」するか。それは、T細胞の機能低下である。判断力を失ったT細胞から放出されたサイトカイン"一斉メール"により、全身のあらゆる所が「攻撃対象」となってしまうためである。
  山中さんは 次のように語った。
「老衰は避けることはできないが、事故などで苦しい思いをしている人たちもいる。それをなんとかしたい。」
 番組で紹介されていたiPS細胞を用いた試みはまだまだ研究段階なので、これが免疫細胞の「暴走」への切り札になれるかどうかは、まだまだ未知数だ。



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