免疫力を低下・突然死を招く感染病
歯周病
(2011年6月22日放送 NHK ためしてガッテン)


歯周病」は世界でもっとも患者数が多いともされている感染症であり、日本でも実に7割の人がこの感染症に
かかっているといわれています。
かつては、「歯が抜ける病気」と思われていた歯周病ですが、近年の研究で全身に影響を及ぼすことが分っ
てきました。
@糖尿病
糖尿病と歯周病の関係は特に密接です
糖尿病を治療することで歯周病が改善しますが、逆に歯周病を治療することで糖尿病が改善するといわれてい
ます。(詳細は後述にて)
Aバージャー病
手足の動脈が詰まり、ひどくなると手足の切断の可能性もある病気です
歯周病菌の一種が心臓は大動脈、静脈などで生息し、血栓の原因になっている可能性があるといわれていま
す。(詳細は後述にて)
B心筋梗塞・脳梗塞
血栓による梗塞が心臓に栄養を送る血管で起これば、心筋梗塞
脳の近くで起これば、脳梗塞となる可能性があり、突然死の引き金になることも考えられるのです。

C低体重児出産
歯周病になると、体内に産生される物質が血流を渡って胎盤に流入し、早産を引き起こします

歯周病菌について

「歯をしっかり磨いている」という人のなんと8割に歯周病が発見されました。
そこで、歯周病予防の落とし穴と注意すべきポイントを分かりやすくお伝えします。
症状が悪化すると失明や足の切断、さらに突然死の引き金になる可能性もあります。

その細菌を顕微鏡で観察すると、粒状の物や蛇のようにクネクネ動くものなど様々なタイプのものが無数にうご
めいていました。

研究者によると、種類と数が増えるほど症状が悪化するといわれています。
ありふれた細菌として見過ごされてきましたが、細菌では研究者の間で様々な病気と密接に関わっているのでは
ないかとの報告が相次いでいます。
この細菌の正体は「歯周病菌
歯周病は口の中の細菌により、歯茎が炎症を起こす病気です。
歯を支える土台の骨に影響が及ぶと歯はグラグラになります。

@糖尿病
糖尿病は、細菌を減らす治療をしたところ、それまで良くならなかったヘモグロビンA1c(過去1〜2ヶ月の血
糖値の状態を示す指標)が劇的に改善した人もいるほどでした。
糖尿病は、血液中のある物質(TNF−α)が増えることで糖分を細胞にしまうインスリンの働きが弱くなり
ます。
番組中ではこの物質を「阻害君」と呼んでいます。
実は歯周病で歯茎が炎症を起こすと阻害君が増えてしまうことがわかりました。
では、なぜ歯周病になると阻害君が増えてしまうのでしょうか?

そのカギとなるのがマクロファージ
体内に侵入した細菌やウイルスと戦う免疫細胞です
歯茎では歯周病菌とマクロファージが壮絶な戦いを繰り広げます。
この時、仲間を呼ぶためにマクロファージが出す物質が阻害君だったのです。

つまり、歯周病を放っておくと歯周病菌が増え、マクロファージが仲間を呼ぶために阻害君を放出。
するとインスリンの働きが阻害され、糖尿病が悪化。
この状態が続くと、体の抵抗力が下がり、歯周病菌がますます増えるといった悪循環に陥ってしまいます。
糖尿病の方が歯周病治療で良くなったのは、その悪循環を断ち切ったためだったのです。

Aバージャー病
バージャー病も原因のひとつとして歯周病菌が疑われています。
バージャー病の多くの患者さんから血管内に歯周病菌の痕跡が発見されています。

研究者によれば,特にジンジバリス(P.g菌)という歯周病菌が多く生息し、血栓の原因になっている可能性が
あるというのです。
番組中ではこの細菌を「ジンの輪」と呼んでいます。

進行した歯周ポケット(歯茎の溝に歯周病菌が入り込み歯を支えている骨が溶けて、溝が深くなったところ)よ
り歯周病菌が血管内に進入していきます。
進入した歯周病菌に大部分が体内の免疫細胞に退治されます。

また、血液には酸素と鉄分が多く含まれており、ジンの輪は鉄分が大好きなのですが、酸素は大嫌い(酸素
があるところでは生きられない)。
それでも血管内に入り込み体内を移動していると考えられます。
どうやって酸素や免疫細胞からみを隠していたのでしょう?

それは、血液に含まれる血小板(出血した際、止血に関与するもの)の中に入って血管の中を移動していたから
なのです。
しかも、ジンの輪が出す毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまうことが実験で分かりました。
これが、梗塞の原因になると考えられます。

B心筋梗塞・脳梗塞
血栓により、これらの梗塞が引き起こされます。
歯周病が進行している人は、そうではない人に比べ、心臓病のリスクは2.8倍、脳梗塞のリスクは2.9倍にも
なるとの報告があります。
歯が抜けるだけではなく、全身の病気に関わる事がわかってきた歯周病。
予防には何よりも歯磨き

しかし、番組で「歯磨きに自信がある」という20代から50代までの男女を調査したところ1日2回以上歯を磨いて
いるという皆さんでも8割の方に歯周病の初期症状が見つかりました。
実は、歯周病予防には3つの落とし穴がありました。

その1・磨き方
毎日歯磨きをしていても歯周病になってしまうのは細菌の塊、歯こうが落ちていない為。
歯ブラシを大きく動かす「ゴシゴシ磨き」だと、歯と歯のすき間に毛先が届かず歯こうがたまってしまうのです。
磨き残しを防ぐには歯ブラシを小さく動かす「クシュクシュ磨き」がおすすめ。

その2・生活習慣
タバコを吸うと煙に含まれるニコチンなどによって歯肉が酸素や栄養不足になります。
酸素が大嫌いな歯周病菌にとっては繁殖しやすい環境になってしまいます。

その3・歯に自信がある人
むし歯になった事が無い、歯に自信がある、という人は歯科医に行く機会が少ないため、歯周病がいつのまにか
進行している場合が多いのです。
歯が痛くなくても年に1回は歯科医へ行く事が歯周病の早期発見・予防の近道です。


★自分で出来る歯周病チェック★
下記の9問のうち、自分が当てはまると思う事項の点数を合計して下さい。

  @歯肉がピンク色で引き締まっている・・・・・・・・・・・・・0点
  A歯肉が赤色や紫色になっている・・・・・・・・・・・・・・・5点
  B歯肉がむずかゆく、歯が浮く感じがする・・・・・・・・・・・5点
  C歯磨きをすると血が出る・・・・・・・・・・・・・・・・・・5点
  D起床時、口の中がネバネバする・・・・・・・・・・・・・・10点
  E歯肉が赤く腫れブヨブヨしている・・・・・・・・・・・・・10点
  F何もしないのに歯肉から血が出る・・・・・・・・・・・・・15点
  G歯がぐらついて物がかめない・・・・・・・・・・・・・・・15点
  H冷たい水がしみる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15点

  合計点数が
    0点・・・・・・・・・・・歯肉は健康
    5点〜25点・・・・・・・軽度の歯周病かも知れません
    30点以上・・・・・・・・重度の歯周病の可能性あり



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