インプラント埋入手術における安全性の確保

インプラト埋入手術における安全性の確保(1)

 最近、NHKにて頻繁にインプラントの危険性を報道している。私もかなりのインプラント手術をこな
しているが現在までは事故とは無縁できている。運か良いだけかと考えるときがある。
 一昨年インプラントで死亡事故が起きた。原因はドリルで前歯付近の薄い骨を削っているときに誤
って舌側に突き抜けて舌動脈を切断して、大量血液で窒息死したと聞いている。
 やはりNHKの番組で、学生実習にて薄い骨にドリルでインプラント埋入の練習風景を見ました。一
部の学生はドリルが骨の壁から突き抜けており眼を覆うばかり。指導医は「こんなにも簡単に事故
が起こるという事を認識してもらいたいと思い」と述べていました。
 どのように熟練した歯科医でも事故は起こりえます。ではどうすればいいのか?原因を考え工夫
することが必要なのです。私はこのような症例ではドリルの使用を避けます。上部の硬い骨を一層
バーで削りその後はアイスピックのような道具(下段写真を参照)を使い、手の力で少しずつ骨を広
げていきます。結構、力を必要しますが手の力では骨の壁を破るのは困難です、当然事故が起こる
余地はありません。症例を多数手がけることは必要ですが、すべての症例で事故を防ぐには知恵と
安全を最大限に考慮した手術システムが必要です。
OAMシステム

前歯のインプラント埋入手術時、かなり骨が薄い場合に行う特殊な手技です
手術時間が少し掛かりますが、骨を削らず広げてインプラントを埋入する方法ですので大変安全で




症例
下顎の前歯の2番目の側切歯の位置へのインプラント埋入手術のCT写真上でシュミレーションして
いるところです。3ミリのインプラント体を埋入するには骨が薄すぎます。
ドリルでの切削では外側の壁に穴が開いたりドリルが突き抜けたりします。大変危険ですが多くの
大学病院や歯科医院ではドリリングで対応してるのが現状です。
当医院ではOAMシステムで対応しています。

前面から見た写真です(オレンジ色の部位です)


横から見た写真です



このように2ミリ間隔の器具にて徐々に骨を広げるため骨の外側の壁を突き破ることなく安全にイン
プラントの埋入孔を開けることが出来ます



0,9ミリ次が1,2ミリ、その後2,8ミリまでは0,2ミリ間隔で器具がそろっています



写真左 7月26日、埋入オペ直後         写真右 10月5日、かぶせ物をして完成です

 埋入ご2ヶ月で最終かぶせ物をして完成です。どんなに骨が薄くても安全に進めることが出来ま
す。手術のシステム自体に危険がありませんので基本を守ればだれでも安全に出来ます。
薄い骨への対応で、ドリリング方ではシステム自体に危険が潜んでいるので熟達者でも事故の危険
性があります

インプラト埋入手術における安全性の確保(2)

 前回(1)では薄い骨に対してはドリルで削るのを避け手の力でインプラント埋入窩を作るお話をさ
せていただきました。
 今回は上顎の奥歯で骨の薄い人へのインプラント埋入手術についてお話しいたします。この手術
は実は大変困難な手術なのです。大学病院等で骨が0,5ミリから3ミリ程度の場合、まず骨を作るこ
とから始めます。入院して全身麻酔か局所麻酔で腰の骨を削り自家骨を採取し、同時に上顎の空
洞(上顎洞)を開きそこに自家骨と人工骨を混ぜたものを入れ、骨を作ります。約6カ月から8カ月待
って、骨が出来てからインプラントの埋入手術に入ります。おおよそ一年の期間と大きな手術を伴い
ます。骨採取手術においては血圧の上昇やバケツ一杯の出血があったとの報告もあります。太平
洋戦争中の大鑑巨砲主義を彷彿とさせます。
 当院では骨造成を必要としない(インプラントを埋入するだけで骨が自然にできる)最新のインプラ
ントと最新の人工骨を使用する事で新しい世界を作り出すことに成功しています。安全性の向上、
お身体へのリスクの減少、手術時間の大幅短縮等大きく変化しております。安全性確保は精神論
だけでは不可能です。すべての症例で事故を防ぐ知恵とシステムが必要です。
 詳細は下記のスーパーソケットリフト術をご覧ください。

スーパーソケットリフト術
 
 一般的なソケットリフト術ははサイナスリフト術同様に上顎洞底の洞粘膜(シュナイダー膜)を挙上する方法です。上顎洞
底までの骨の高さが十分ではなく、5〜9mm程度の場合、ソケットリフト法の適応です。
 当院では新手法のスーパーソケットリフト術を開発しすでに150症例以上を実施しています。

下記の症例では上顎のインプラントを実施するためCT(立体レントゲン)撮影致しました

 
その部位の拡大エックス線像です
上顎には他の場所と違い上顎洞という頭を軽くするための空洞があり骨が2〜4ミリ程度しかなく、インプラントは大変困難
です



前方から見たエックス線像

このような場合一般的にはサイナスリフト術の適応となり以下のような複雑で大変な手術を行わなければなりません。
 術式としては一次手術としてご本人のお口の中や腰などから自家骨を集める。2次手術として採取した自家骨と人工骨を
混ぜて上顎洞粘膜下に骨移植、添加を行い、8ヶ月ほど骨が形成されるまで待ちます。骨が出来たのを確認して次に3次
手術としてツーピース法でインプラントの埋入手術を行い(最近、骨の添加とインプラントの埋入を同時に行い、期間を短縮
する方法も行われています)、3〜4ヵ月後に再度切開して上部のかぶせ物を作って行きます。大学病院では希望によって
は全身麻酔、数日の入院等の選択もあり、複雑な術式とともに肉体的リスクも多く敬遠されがちです。

当院では最新のHAコーティングタイプのインプラント体(フィクスチャー)を使い一回の手術でスーパーソケットリフ
ト術で行います。埋入後4ヶ月で最終のかぶせ物をして完成となります。大変シンプルで患者さんの負担も最小
限ですみます。


オペ当日のエックス線写真です

4ヵ月後のエックス線写真です すでに骨が出来ております

その後かぶせ物をして定期検診へ移行します


安全を確保するためには精神論や技術だけでは不足です。安全を背景にした、だ
れでも出来るシステムが必要です


戻る
戻る